平成28年 最優秀賞 花柳 寿美藏
(平成28年5月30日(月)開催 定時会員総会表彰式にて)
このたびはこのような大きな賞を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。
まずは、常日頃から大きな心でご指導くださり私の進むべき道を示してくださる花柳壽應先生に深く深く御礼申し上げます。そして本当にいつもたくさんの方々に細かい技術的なことから大きな視点での踊りに対する心構えや姿勢、取り組み方までいろいろなご助言をいただきまして、私は今日この場に立っております。そのお一人お一人にこの感謝の気持ちを申し上げます。
私は舞踊家を志したのが遅かったものですから常にまわりに追い付け追い越せと思いながらやって参りました。同年代の方たちが活躍してるのをみながら、自分はなんとも不甲斐ないなとすごく焦った時もありました。でもそんな時には母が「急いでもダメ。自分の足元を見ながらゆっくり歩いていきなさい」と言ってくれました。それが母の教えでした。時間がかかっても誠実にコツコツやっていればいつかそれが実を結ぶ、とにかく地道に一歩一歩なんだ、と。私には多くを語る人ではありませんでしたが背中で示してくれました。父が早くに亡くなりましたので父母両方の役割をしなくてはという思いもあったのだと思います。昔から舞踊家になることを薦めることはありませんでした。でもこの道を選んだ私にちゃんと舞踊家としての道を用意してくれていました。たくさんの方々に「寿美藏をよろしくお願いします。なにかあったら使ってやってください」と頼んでいてくれていたそうです。
本当にたくさんの先生方に「お父さんとはよく創作で踊ったよ」とか「お母さんと群舞で一緒になってたのよ」とお声をかけていただきます。大変にありがたいことだとおもっています。そのように気にかけてくださる方々がいてくださるおかげでこの道を歩んでいくことができています。
父母のように厳しくも温かくご指導くださる先生方、兄姉のように叱ってくれながら心配して面倒を見てくれるくれる先輩たち、そして共に歩んでくれる仲間たち。このような人の繋がりを二人の親が遺していてくれたので少しも心細いと思ったことはありません。
今、一番の親のような存在でいてくださる壽應先生は今回がスタートラインだとおっしゃってくださいました。気持ちを新たに、不器用なものですから牛の歩みのようかも知れませんが皆さまの助けをいただきながら精進して参ります。
千日の稽古をもって鍛とし、万日の稽古をもって錬とす。という言葉があるそうです。コツコツと急がずあせらず、千日、万日と稽古を重ね、とにかく踊りに対して誠実であることを第一に考えて参ります。どうぞこれからも厳しくご指導くださいますようお願い申し上げます。